古典

G:「星占いの腕前は上がった?」
A:「ぼちぼち。」
G:「最近何やってるの?」
A:「波動関数の確率解釈についてだよ。」
G:「それって古典的解釈のこと?」
A:「古典?」
G:「歴史学習の時間で教わったところによると、君の時代の量子論では、未来から過去への干渉を防ぐために真空に揺らぎがあるとして、確率性が与えられてるのよ。」
A:「真空の揺らぎ?」
G:「隠れた変数が仮にあったとしても、誰にも手出しができず、制御不能なのと同じことよ。」
A:「最近、聞いたような・・・?」
G:「特殊相対論では、因果律が破れないように光速の壁が守っている。君も知ってるように、慣性系同士で真空中の光速値は一定で、この場合に確率性は不要なのよ。」
A:「因果律と光速の壁?」
G:「いずれの理論でも、真空の不可知性を認めることで成立してるワケ。」
A:「不可知性?」
G:「だれも真空の裏にある変数の値を変えられない、ってことよ。この変数は神様しかいじれないからってことで。 特殊相対論は、それを断念するところから出発したんだったわね。」
A:「どこの神様?」
G:「因果律を破る変数が発見されたら、2つの理論はともに破綻するわ。」
A:「君の時代の波動関数は古典的じゃないの?」
G:「そう。わたしの時代には真空の構造について、かなり分かってるから。波動関数なんて言葉自体、とっくに廃れてる。」
A:「どういうこと? 真空は何もない状態じゃなくて、何かがあるってこと?」
G:「これ以上のことは教えられないわね、過去への干渉になるから。」 
A:「よくいうよ、僕の世界には十分すぎるほど干渉してるくせに。」