第2の壁

A:「ここでお別れだ。」
G:「でも、わたしがこのまま壁の向こう側へ行ってしまったら、因果律に矛盾しない?」
A:「その心配は御無用。途中から気づいてたよ。
   タイムトリップは、香水とこの人形を使った一種の催眠術だってこと。
   僕は、君が見せてくれたバーチャル・リアリティの中にいたんだ。」
G:「騙されたフリをしてたの?」
A:「なかなか面白かったからね。」
G:「でしょう?」
A:「ああ。もう人形は必要ないから返すよ。」
G:「私の未来はあなたのチーム文殊が開発する技術にかかってるんだから、しっかりやってね!」
A:「ラージャー。」

G:「あんまり、キョロキョロしないでよ。」
A:「分かってるさ。」
G:「わたしが追われてる身だってことを忘れないで。そうじゃなくても目立つ格好なんだから。」
A:「初めて都会に出てきたみたいなもんだから。」
G:「この時代に書店はないから。データサービスセンタに侵入するしか方法がない。」
A:「君はハッキングもやるの?」
G:「無線チャンネルに侵入して、地図の画像データを入手する必要がある。」
A:「面倒だな。図書館を探して地図をコピーすればいいのに。」
G:「あのね、コピーするにはお金がいるのよ。それに電子図書館に紙の地図は置いてないわ。
   画像データがスクリーンに表示されれば、あとは何とかなる。」
A:「なんとかって?」
G:「わたしの使ってるコンタクトレンズにはマイクロカメラが搭載されているから、それで画像データを記憶するのよ。」
A:「そんな裏技があったのか。もしかして君はアンドロイドのターミネータ?」
G:「百済ないことを言ってるヒマはないわ。すぐに情報入手に出かけないと。」
A:「でも、未来のことは覚えていないんでしょ?」
G:「君にはそうだけど、私にとってこの時代は過去なの。」

3人

A:「ここは?」
G:「高速増殖炉もんじゅがあった場所よ。」
A:「廃炉になったんだ。」
G:「冷却材のナトリウム漏れを起こしてからずっと停止して、その間もナトリウムが冷えないように電気を使ってたから費用が大分嵩んだようね。」
A:「3人よれば文殊の知恵が働かなかったわけだ。」
G:「その3人すら、なかなか集まらなかったってこと。」
A:「この場所に僕を連れて来たのは何のため?」
G:「君と私の未来のため。
   そのうち、もう1人やってくるわ。」

(3分経過)
C:「やぁ、久しぶり。」
A;「このおじさんはいったい誰?」
G:「大病院の御曹司。」
A:「ホントに?」
G:「というより今は放射線医学と放射線遮蔽学のエキスパートよ。」
C:「君らに深入りしすぎたようだ。」

スリップ

A:「あれ、図書館ってこんなんだったかな?
  (ダッコちゃんの目の中を覗き込む)
  10年間違えたみたい。ということは未来のことを調べるチャンス。でも、なんかカンニングしてるって感じ。」
G:「やっぱり、ここにいた。ドジ。」
A:「いい勘してるね!」
G:「言っとくけど、君が未来で知ったことは後で憶えてはいないから。」
A:「なんだ、残念。」