誤解

A:「あなたは、愛酒タインをシュレーディンガーの実験箱に入れて殺すつもりだったんですか?」
M:「まさか、このワタシが?」
A:「じゃ、どういうことか、説明してください。」
M:「シュレーディンガーの実験箱の場合、箱を開けて見たときに、愛酒タインが生きていれば「1」の状態で、死んでいれば「0」の状態ということができる。」
A:「箱を開けない状態は、0.5とか0.3とかの状態ですか?」
M:「そんなことはない。”?”状態だよ。なぜなら、愛酒タインの生死を示す手がかりは何もないのだから。すなわち、箱を開けるまで、愛酒タインが生きている状態と死んでいる状態とが重なり合った状態だなんてことにはならない。
   世間の連中は、ワタシのことを誤解しておるから、まったく困ったものだ。
   ワタシは愛酒タインを殺す気など毛頭ない、とはいえ、頭の毛の方も大分淋しくなってきておるが・・・。」
A:「どうするつもりだったんですか?」
M:「ワタシはただ、自分の作った実験箱によって、愛酒タインの物理的実在を、別の世界での物理的実在に移すつもりだっただけだ。」
A:「それが現実に可能なら、殺すよりも残酷なことです。」