実在

A:「これまでイロイロと計算して来たけど、未だに量子が実在するかどうかが疑問なんだ。」
B:「では、君は粒子が実在すると思ってるの?」
A:「そりゃそうでしょ。」
B:「科学理論はもともと、何かの存在を証明できるような代物ではないんだけどね。」
A:「え、そうなの?」
B:「対象がある程度正確に測定される場合、その量を記述できるだけだよ。
   ニュートン以来の力学に粒子を証明するような式はないし、光や波は現象だから物体じゃない。」
A:「量子は粒子でも波でもないから、発見されたんでしょう。ヒッグス粒子はヒッグス場の量子でしょう?」
B:「量子は現象の背後にある概念で、物体ではないから、そんなものを誰も見た人はいないさ。」
A:「それじゃ、物理学は実在しないものを計算してる訳?」
B:「計算結果が偶然に一致したからといって、それだけで実在するとは断定できないよ。
   実在するかどうかは、多くの実験データが集まって確からしいと信じられるレベルになったとき、地球人がそう思うだけのこと。」
A:「僕は君が実在すると信じてるんだけど。」
B:「この星の人は、そう思ってはいないさ。」