振り出し

A:「ところで、h=2πとしたシュレーディンガー方程式、i∂tψ=Hψに、
  H=√((Pc)^2+(m・c^2)^2)を入れて解くことができるの?」
B:「そのままでは、√があるから、ちょっと厄介だ。それでi∂tをもう一回使うと、こうなる(*1)。
   Pを、−i∇とするんだ。∇は(∂x,∂y,∂z)のこと。」
A:「□は何?」
B:「これは、∇^2−(1/c^2)∂ttのこと。
   (□−(m・c)^2)ψ=0は、クライン−ゴルドン方程式と呼ばれてるけど、最初に出したのはシュレーディンガーなんだよ。」
A:「もう少し簡単にならないの?」
B:「Pψ=0の場合には∇は出てこないから、
   −∂ttψ=(m・c^2)^2・ψが出る。
   ψ=exp(iωt)とおけば、ωが求まるよ。」
A:「ω^2=(m・c^2)^2だから、ω=±m・c^2となる。」
B:「次に、ψ=φ・exp(±m・c^2・t)とおいて、i∂tψ=Hψに代入すると、こうなる(*2)。
   φは位置xjとc・tの関数だ。」
A:「位相kμ・xμ−ω・tで、kμ=0とω=m・c^2を使うと、exp()の括弧内は、−i(m・c^2)tだから、マイナスの項が出るよね。」
B:「H−m・c^2の計算は以前にやったように近似すると、
   運動エネルギーの項、P^2/(2m)だから、Pを−i∇をおけば、君の知ってる式、
   i∂tφ=(−∇^2/(2m))φ=−(1/2m)・(∂xx+∂yy+∂zz)φ
   が出る。」
A:「i∂tφ=(H+m・c^2)φと、i∂tφ=(H−m・c^2)φの両方を使えば、こうなる(*3)。」
B:「Pを−i∇に換えれば、
   □φ=0、つまり、(∇^2−(1/c^2)∂tt)φ=0となる。
   最初にやった波動方程式が出てきて、また振り出しに戻ったって訳だ。」

(*1)
 i∂t(i∂tψ)=H^2ψ
−∂ttψ=((Pc)^2+(m・c^2)^2)ψ
−(1/c^2)∂ttψ=(−∇^2+(m・c)^2)ψ
 □ψ=(m・c)^2・ψ

(*2)
 i∂tφ=(H±m・c^2)φ

(*3)
 (i∂t)^2φ =(H+m・c^2)・(H−m・c^2)φ
        =(H^2−(m・c^2)^2)φ
        =(Pc)^2・φ