時間
A:「お次は時間演算子Tといってみよう。」
B:「大分調子が上がってるみたいね。僕の出番はないみたいね。」
A:「君はオチを考えてればいい。」
B:「計算する方が楽だよ。」
A:「まぁ、そう言わずに。
T=WT0W^から出発して、見やすい形にしてみよう。
exp(iH0t)とT0の交換関係は、こうなる(*1)。」
B:「また前回と同じような台詞だけど、大丈夫?」
A:「ここでは、[H0,T0]=iを使ってる。」
B:「それは、僕の台詞なんだけど。」
A:「T=(T0−t)exp(iH0t)・exp(−iH0t)
= T0I−tI
となる。I=exp(iH0t)・exp(−iH0t)=exp(0)で、H0I=H0(*2) だから、
T=T0−tI が出てくる。」
B:「TはT0をtだけ過去にずらす演算子ってことだね。」
A:「ここからは前回の繰り返しはもう止めて、T=T0+tIを出そうと思う。」
B:「tの符号を反転させて、−tにするってことだね。」
A:「時間反転操作をR(T)と書くことにすると、
R(WT0W^)=exp(−iH0t)・T0・exp(iH0t)
t0を時間の原点としてR(T0)=T0の場合、こうなる(*3)。」
B:「予定通り、T=T0+tIがでるね。
R([T,H])はどうなるかな?」
A:「こうかな(*4)。」
B:「idT/dt=i∂tT+[T,H]で、tを−tに変えて、Tを−Tに変えると、
idT/dt=i∂tT−[T,R(H)]になるから、R(H)=−Hでないといけない。」
A:「時間の向きを逆にすると、Hの符号も変るのか。
時間を未来に進めるには、T=exp(−iH0t)・T0・exp(iH0t)とする必要がある。」
B:「ハイゼンベルクの運動方程式でA=Hとおいて∂tH=0の場合、
idH/dt=[H,H]=0となるから、H=H0で時間が経っても変らない。
Tはtだけの関数だから、
idT/dt=i∂T/∂t=±[T,H]=±[T,H0]=±iIとなる(*5)。」
A:「Hの符号を変えるってことは、借りてたエネルギーを返せば過去に戻れるのかな?」
B:「借金と同じで返済して前の状態に戻っても、そうなるまでには時間がかかる。
でも、君のその腕時計を反対方向に進めるのと同じようなことをするには、もっと簡単な方法があるよ。」
A:「そんな方法あるの?」
B:「君のもってる想像力という翼を使えば、どんな過去にでも飛んでいけるさ。」
(*1)
[exp(iH0t),T0]=itexp(iH0t)[H0,T0]
exp(iH0t)T0=T0exp(iH0t)−texp(iH0t)
(*2)
T0 =exp(0)T0exp(0)
=T0exp(0)・exp(0)
=T0I
(*3)
exp(−iH0t)T0 exp(iH0t)
=T0exp(−iH0t)exp(iH0t)+texp(−iH0t)・exp(iH0t)
(*4)
[−T,H]=[−W^T0W,W^H0W]
=−W^[T0,H0]W
=iI
(*5)
i∂T/∂t=i∂(±tI+T0)=±iI
∂t(exp(−iH0t)・T0・exp(iH0t))
=∂t(exp(−iH0t))・(T0・exp(iH0t))+exp(−iH0t)・∂tT0・exp(iH0t) + (exp(−iH0t))・T0・∂t(exp(iH0t))
=−iexp(−iH0t)・H0T0・exp(iH0t)+iexp(−iH0t)T0H0exp(iH0t)
=−iexp(−iH0t)[H0,T0]exp(iH0t)
=−i[exp(−iH0t)・H0・exp(iH0t),exp(−iH0t)・T0・exp(iH0t)]
=−i[H,T]
∂t(exp(iH0t)・T0・exp(−iH0t))
=i[H,T]