水面下

A:「時間微分と[]内の関係がイマイチよく分かってない。」
B:「結果だけみてると、水面下で何が起こってるか分からないんだ。」
A:「演算子A(X)をXの関数として、
   i・dA(X)/dt=[A(X),H(P)]を計算してみれば、何か分かるかもしれない。」
B:「A(X)をマクローリン展開すると、こうなる(*1)。
   An(0)はA(X)をn回Xで微分してXをゼロとおいたもの。Σはnを0から∞まで足し合わせるという意味だよ。」
A:「nに!がついたものは、1からnまで掛け算するってことだね。
   この計算には、先ず[X^n,H(P)]の計算をやる必要がある。」
B:「X=i・∂pとおいて計算してもいいけど、今日はこの公式(*2)を使ってやってみよう。」
A:「B=C=Xで、D=Hとおくと、X[X,H]+[X,H]X=2・X・[X,H]がでる。[X,H]はi・dX/dtだったな。
   [X^n,H]=X[X^n-1,H]+[X,H]X^n-1で、帰納法(*3)を使えば、
    n・X^n−1・(i・dX/dt)が得られる。」
B:「帰納法なんて知ってるの?」
A:「きのう授業でやったから。」
B:「・・・。」
A:「ともかく、この結果(*4)になる。」
B:「この{}内はA(X)をXで微分したものだよ。」
A:「つまり、(dA(X)/dX)・(i・dX/dt)だから、X(t)の場合の時間微分を計算したことになる。」
B:「水面下では、あまりなじみのない計算をやってみたけど、
   出てきた結果は大したものじゃなかったね。」

(*1)
 A(X)=ΣAn(0)・X^n/n!

(*2)
 [B・C,D]=B[C,D]+[B,D]C

(*3)
 n=1:  [X,H]=i・(dX/dt)
 n=k-1:  [X^k-1,H]=(k-1)・X^k-2・[X,H]
 n=k:   [X^k ,H]=X[X^k-1,H]+[X,H]X^k-1
              ={(k-1)・X^k-1+X^k-1}・[X,H]
              = k・X^k-1・[X,H]
(*4)
 [A(X),H(P)]={ΣAn(0)・X^n-1/(n−1)!}・(i・dX/dt)