運動方程式

A:「ローレンツ変換式の計算にも大分慣れてきたよ。」
B:「アインシュタイン特殊相対性理論からさらに進んで、誰も注文しなかった一般相対性理論を編み出した人なんだよ。これはかなり数学的だからやらない。
   これまで量子論のサワリの部分は計算している。」
A:「相対論は高速世界に適用され、量子論はミクロ世界に適用されていて、2つが繋がってるのが意味深だ。あの世とこの世が繋がってるって感じ。」
B:「ここから先は、アインシュタインの出番は殆どなくなってくるけど、また少し数学でお絵かきをやってみようと思う。まずは、
   H=√((P・c)^2+(m・c^2)^2)から出発する。」
A:「HはEじゃないの?」
B:「HとPは演算子で時間tの関数としてる。H(t)とP(t)のこと。t=t0のときE=H(t0)とするんだ。質量mは定数として、√の前の符号はプラスにしている。」
A:「前にやった式から、dH/dP=c^2・P/H=vgがでる筈だ。」
B:「それを確かめるのさ。
   君の座標で位置の演算子をX(t)として、交換関係[X(t),H(t)]を計算してみよう。」
A:「どうやって?」
B:「X=i・∂kとして、h=2・πとするとき、P=kだから、X=i・∂Pと書ける。
   そこで、Pの関数F(P)とXの交換関係[X,F(P)]を計算しよう。」
A:「こうなって(*1)、F(P)をPで偏微分してiが掛かる。」
B:「F(P)をHとおいたらどう?」
A:「簡単。
   (i・∂P) H(P)=i・P・c^2/Hだ。これはvgにiを掛けたものだ。」
B:「vgは群速度だから、dX(t)/dtのことだよ。
   時間tが変っても、[X(t),H(t)]の関係が同じだとすると、この式が出る(*2)。
   これはハイゼンベルク運動方程式と呼ばれている。」
A:「ハイゼンベルクって誰?」
B:「不確定性原理を言い出したチョーホンニンさ。」
A:「運動量P(t)の場合は?」
B:「X(t)をP(t)に置き換えればいい(*3)。
   この場合、[P,H]=0だから、dP(t)/dt=0となって、運動量は一定となる。」
A:「うーん、かなり神秘的な感じ。」
B:「複素数の波の関数φは波動関数といって、この場合には時間tの関数でない。ハイゼンベルクの見方では、波の状態は時間に関係なくて、演算子の方が時間とともに変っていくんだ。」
A:「何のことやらさっぱり。」
B:「まあ、最初はそんなもんだから気落ちしないで。君が直ぐに分かったとしたら奇蹟認定の申請を出すところだよ。」

(*1)
 [X,F(P)]φ
=i・∂P(F(P)φ) −F(P)・(i・∂P)φ
=(i・∂P F(P))φ+F(P)・(i・∂P)φ−F(P)・(i・∂P)φ
=(i・∂P F(P))φ

(*2)
 i・dX(t)/dt=[X(t),H(t)]

(*3)
 i・dP(t)/dt=[P(t),H(t)]