推理

A:「この間の人は、どうやって相対速度の式を出せたのかな?」
B:「僕の推理では、君のノートに書いてあった式(*1)を見たからだと思うよ。」
A:「たったそれだけで?」
B:「ΘをΘ1+Θ2とおいてβ3を出すには、tanh(Θ1+Θ2)をtanh(Θ1)とtanh(Θ2)で表す公式(*2)を知っている必要がある。」
A:「tanh(Θ1)=β1とtanh(Θ2)=β2だから、β3=(β1+β2)/(1+β1・β2)が出るって訳か。」
B:「Θはラピディティといって、tanh()の逆関数arctanh()から計算できる(*3)。   ln()は自然対数関数で、ln(exp(1))=1だよ。」
A:「この式(*4)から出発して、さっきの公式(*2)を出すのは、・・・そう楽ではないよ(*5)。」
B:「公式を記憶してたとしたら、そうでもないさ。」
A:「やっぱりタダモノではなかった。」
B:「速度の定義はいろいろ違っていても、同じ形になるってことが面白いんだ。」
A:「僕はそれよりも、君に探偵趣味があることの方が興味深いよ。」


(*1)
 tanh(Θ)=β

(*2)
 tanh(Θ1+Θ2)=[tanh(Θ1)+tanh(Θ2)]/[1+tanh(Θ1)・tanh(Θ2)]

(*3)
 Θ=(1/2)・[ln(1+β)−ln(1−β)]

(*4)
 tanh(Θ1+Θ2)=[exp(Θ1+Θ2)−exp(-Θ1-Θ2)]/[exp(Θ1+Θ2)+exp(-Θ1-Θ2)]

(*5)
 Θ1+Θ2=(1/2)・ln((1+β1)・(1+β2)/(1−β1)/(1−β2))
A=exp(Θ1+Θ2)=√((1+β1)・(1+β2)/(1−β1)/(1−β2))とおくと、
 tanh(Θ1+Θ2)=(A−1/A)/(A+1/A)
         =(A^2−1)/(A^2+1)
         =[2・(β1+β2)]/[2・(1+β1・β2)]