パラドックス

A:「双子のパラドックスって知ってる?」
B:「この国には浦島効果というのが知られているから、そのぐらいの話では誰も驚かないと思うよ。」
A:「せっかく計算方法が分かったんだから、何か練習問題はないの?」
B:「例えば、一卵性のブタの三つ子が生まれて、一匹が地球に残り、もう一匹が宇宙人Bに拾われてUFOに乗って一定速度Vで旅にでて、残り一匹が宇宙人CのUFOに乗って−Vの速度で旅にでたとしよう。」
A:「三つ子のパラドックスか。でも、同じ歳なら別に兄弟でなくてもいいんじゃない?」
B:「時計合わせをする必要がないのと、同じ歳で外見が違うってことになると話がややこしくなるからさ。」
A:「まあいいや。でもどうしてブタなの?」
B:「人間だと話が深刻になるから。」
A:「それで、三匹のブタの歳はどうなるの?」
B:「まず、君が地球にずっといるAブタで、僕が宇宙人BのUFOに乗ってるBブタで、もうひとりが宇宙人CのUFOに乗ってるCブタとする。」
A:「僕の知り合いがあそこにいるから、ちょっと呼んでくるよ。Cブタの役をやってもうように頼んでくる。」
(数分後)
A:「こちらは、計算の得意なC君です。」
C:「よろしく。事情は聞きました。」
B:「面倒なことに巻き込んですみません。」
A:「ところで、僕も宇宙旅行したいんだけど。」
B:「君がBブタかCブタの役になると外野が混乱するから、ここは我慢してもらいたい。」
A:「そういうもんなの?」
B:「あぁ。まず、君からみた僕らの歳はどうなるかな?」
A:「相対速度の大きさVはどちらも同じだから、係数はγ(*1)でBとCは同じ歳になる。例えば、Vが光速の半分だとして僕が100歳なら、えーと、BとCは86歳になるね。」
B:「僕の場合、Aとの相対速度の大きさはVで、Cとの相対速度の大きさV’(*2)はVより大きくなる。だから僕が100歳なら、次男Aは86歳で、三男Cは60歳となる。」
C:「なんだよ、計算するまでもなく、Aとの相対速度はVで、Bとの相対速度はV’となるから、僕は100歳、次男Aは86歳、三男Bは60歳だよ。」
A:「要するに、自分が1番年上で他は年下ってことか。自分だけ歳をとるってのはちょっとね。」
B:「でも、君が会いたいと思えば、生きてるうちに兄弟に連絡をとれるよ。そのときに自分より年上がいたら、会えなくなる可能性がある。」
C:「ところで、BとCが地球に戻ってきて、Aに会ったときはどうなの?」
A:「えーと、長男の僕は、君たちからみると次男で、君らは同じ歳なのに、次男だったり三男だったりで・・・、ヒジョーにややこしい。」
C:「結局、3匹とも同じ歳だった、というのがオチかな。ブタは100年も生きないと思うけど。」
B:「1つだけハッキリしてるのは、うちに帰ってからもう1度考え直すと、夜更けとともに謎はさらに深まるってことだよ。」

(*1)係数γ=1/√(1−β^2) β=V/c
(*2)V’=2・c・β/(1+β^2) 
    γ=1/√(1−(V')^2)=(1+β^2)/(1−β^2)