交換関係

A:「前回は、運動量の演算子Pをi∂xとして、エネルギーの演算子Eを−i∂tとしたけど、位置と時間の演算子はまだ出て来てない。」
B:「位置の演算子をXとおいて、Xφ=x・φとする。」
A:「時間の演算子をTとおいて、Tφ=t・φとする。」
B:「量子力学で特に重要なのは、PX−XPとET−TEいう演算子なんだ。PX−XPをφに作用させると、どうなるかな?」
A:「ゼロじゃないの?」
B:「実は、そうならないんだよ(*1)。」
A:「Pはxにもφにもかかってる。」
B:「PX−XPを[P,X]と書いて、[P,X]=iを交換関係と呼んでる。」
A:「EとTでは、[E,T]=−iになるね(*2)。」
B:「符号が違うだけ。僕の座標ではダッシュをつければいいから、
   [P',X']=i
    [E',T']=−i
  になる。」
A:「では、[E,X]とか、[P,T]はどうなるの?」
B:「ゼロだよ。」
A:「計算のご利益はないね。」
B:「そのうちにあると思うよ。」

(*1)
 (PX−XP)φ
=P(x・φ)−X(k・φ)
=i∂x(x・φ)−k・(Xφ)
=i(φ+x・φ,x)−(k・x)・φ
=i(φ−x・ik・φ)−(k・x)・φ
=iφ+(x・k)・φ−(k・x)・φ
=iφ

(*2)
 (ET−TE)φ
=E(t・φ)−T(ω・φ)
=−i∂t(t・φ)−ω・(Tφ)
=−i(φ+t・φ,t)−(ω・t)・φ
=−i(φ+t・iω・φ)−(ω・t)・φ
=−iφ+(t・ω)・φ−(ω・t)・φ
=−iφ