第3の壁

G:「この壁の向こう側に行ってくるから、ここで待ってて。」
A:「また、待ち人かよ。」
G:「君には未だ無理なんだから。」
A:「仕方がない。その間にキリストの誕生にでも立ち会って来ようっと。
   ニュートン新約聖書の暗号解読に凝ってたらしいから、何かヒントが掴めるかも。」
G:「キリスト?」
A:「いま僕らのいる今日という日は、イエス・キリストが生まれる日だよ。」
G:「何言ってるの。キリストはとっくに生まれてるわよ。」
A:「え?」
G:「つまらない計算ばかりしてるから、頭の中の重心がずれてきてるんじゃないの。
   キリストが生まれた後で暦法がかわってグレゴリオ暦になってるから、彼は紀元前4年生まれってことになってるのよ。」
A:「ということは、今日の1年前は紀元ゼロ年?」
G:「ったく、困った人ね。昨日は紀元前1年。
  ヘロデ王から逃れるために、キリストの一家はエジプトのどこかに隠れてる筈だから、そう簡単には見つけられないわよ。」
A:「じゃ、僕はここで何をしてればいいんだ。」
G:「すぐに戻ってくるから。」
(10秒経過)
A:「ほんとに直ぐ戻ってきた。」
G:「マヤ文字の解読に少し手こずったけど、この星には巨大隕石が少なくとも3回衝突したらしいわ。」
A:「いつの時代の、どの場所?」
G:「海もパンゲア(大陸)も変ってしまってるから、正確な地図を作らないと場所を特定できないわ。」
A:「そんな大仕事には、僕は全く手出しができない。」
G:「まぁ、なんとかしてみる。」
A:「君はなんてタフなんだ。」
G:「それは、キリストからもらった愛の力のおかげよ。」