観測
A:「あなたは、何ものなんですか?」
P:「ただの詩人です。」
A:「どんな詩を書いてるんですか?」
P:「科学が万能であると信じている人々に警鐘を鳴らすための詩です。
例えば貴方は、実在するものは観測できると思いますか。」
A:「ある程度は、そうですが、観測には限界があるので、必ずしも全てを観測できるとは思いませんが。」
P:「つまり、観測限界内で、実在するものが観測できるということですね。
実在するものが観測できることが仮に正しいとすると、
観測できないものは、存在しないことになります。
しかし、あなたはそうではないと言っています。
A:「観測できないものは、存在することも、存在しないことも判らないでしょう。」
P:「観測できないものが存在する可能性もあれば、存在しない可能性もあるということです。」
A:「結局、何がいいたいんですか?」
P:「私は何かを主張するために来たのではなく、貴方を観測するために来たのです。」
中心
P:「貴方は星占いをやっているそうですが、ほんとうですか?」
A:「誰から聞いたんですか?」
P:「風変わりな女の子からです。」
A:「(また、アイツか!)」
P:「あなたの星占いは、どのような理論に基づいているんですか?」
A:「一般相対性理論です。」
P:「的中精度は高いですか?」
A:「かなりの精度です。」
P:「では、ひとつ占ってもらえないでしょうか?」
A:「場合によりますけど、どんなことでしょう。」
P:「我々は、これからどこに向かっていくのでしょうか?」
A:「この星の表面にあるものは、星の中心を基準に回りながら、太陽内の点を焦点として楕円軌道を描いて回っているだけですよ。」
P:「でも、太陽系は銀河系の中心部から離れたところを回っているんじゃないですか。
私が知りたいのは、銀河系もまた、どこかを中心にして回っていて、さらに銀河団もまたそうなら、いったい宇宙の中心はどこにあるのかってことです。」
サングラス
M:「原子爆弾といえば、その実験を最初に肉眼で見たのはリチャード・ファインマンだ。」
A:「サングラスを忘れたんですか?」
M:「いゃ、そうではないらしい。
彼はワタシの遠縁で、かなり風変りな人物だったらしい。
この本はもう要らんから、君に渡しておこう(*1)。」
A:「いいんですか?」
M:「君は、演算子を使った量子力学を知ってるだろうから。
[Pμ, Xν]=i・η_μνという式は、確かシュレーディンガーが書いておった。
交換関係を基本として演算子を用いる方法はディラック自身が開発した方法だが、
ディラックからファインマンが受け継いだもう1つの方法は、経路積分法と呼ばれている。
この方法では、積分変数が古典軌道から揺らいで変化するときの作用を全部足し合わせることで遷移振幅を計算できる。交換関係みたいな天下り条件を使わずに済むので、直観的な方法だ。」
A:「計算は簡単になるんですか?」
M:「君の期待を裏切るようで悪いが、計算はかえって面倒になる。」
A:「・・・。」
M:「ジックリ取り組めば、面白くなるハズだ。
では健闘を祈る!」
(*1)
ファインマン
経路積分と量子力学
(QUANTUM MECHANICS AND PATH INTEGRALS)
- 作者: R.P.ファインマン,A.R.ヒッブス,Richard P. Feynman,Albert R. Hibbs,北原和夫
- 出版社/メーカー: みすず書房
- 発売日: 1995/05
- メディア: 単行本
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貢献
A:「不確定性関係から、
<Δ(mv)>・<Δx1> ≧ 1/2
で、h=2πとしてます。 <>は誤差記号です。
<ΔE>・<Δt> > <ΔP1>・<Δx1> ≧ 1/2
になります。」
M:この場合、<Z>は揺らぎによるZの偏差を表す。
速さvが光速cよりも十分に小さいときには、v/cをゼロとおいて、
<ΔP1>・<Δx1> =0が得られる。
つまり、 運動量と位置は正確に測れるが、<ΔE>・<Δt>はゼロにはならんのだから、そうはトンマが卸さない。」
A:「トンマ?」
M:「もとい、問屋だ。」
A:「光でシャッタを動かせるくらいなら、ふらふらしててどっちも正確に測定できないと思いますけど。
シャッタの開く時間が確定しないことは分かります。」
M:「箱の中の光はシャッタの隙間を狙って飛び出そうとするが、常に出られるワケではない。
Δtが一定しないから、箱の中では光のエネルギーが揺らいでいる。
この箱を作って実験するときに注意しなければならないのは、外から光が箱の中に入らないようにすることだ。」
A:「そんな箱を作って、何の役に立つんですか?」
M:「役に立つかだと!
それは他の誰かが考えればいいことだ。些細なことに気をかけてはいけない。
もし君が科学に貢献したいと思っているなら、そのような考えは早く捨て去ることだ。」
A:「なるほど。
原子爆弾を作ってから、その使い途を考えるワケですか。」
シャッタ
M:「君がホントーに来るとは思わなかった。」
A:「約束は守りますよ。」
M:「では、話を進めることにしよう。
実験箱の中には、カエルでもハチでも電子でもいいが、何かが飛び回っているとする。」
A:「光じゃないんですか?」
M:「おお、そうだった。アインシュタインの箱には光が入っている。」
A:「出口は無いんですか?」
M:「そう、穴が1つ空いておるんだが、その穴は通常、シャッタで塞がれている。
但し、シャッタ自体が軽くて、スムーズに開閉できるものとする。」
A:「シャッタが開くと穴から光が飛び出してくるって仕掛けでしょ。」
M:「シャッタが勝手に開くことはないから、光がシャッタの端に当たって、その反動で動くと、その隙間から光が出られる可能性がある。箱をイメージできたかな?」
A:「なんとなく。」
M:「シャッタが動く方向をx1方向として、質量をm、速さをvとすると、運動量の変化はどうなるかね。」
A:「Δ(mv)です。」
M:「シャッタが一瞬開く時間をΔtとして、その隙間をΔx1とすると、Δx1=v・Δtがでる。
ところで、君は光のエネルギーEと運動量Pとの関係を、知っておるハズだ。」
A:「E=|P|・c」
M:「シャッタが開いた瞬間に光が飛び出して来る方向が、ほとんどx1方向であったとする。この場合、|P|はP1としていい。
運動量の保存則から、Δ(mv)=ΔP1が出せる。 少々計算するとこうなる(*1)。」
(*1)
Δ(mv)・Δx1
=ΔP1・v・Δt
=(v/c)・ΔE・Δt
Δ(mv)・Δx1 / ΔE・Δt =v/c <1